RIZIN.28を振り返ります
こんにちは、ロジカルMMAです!

少し遅くなりましたが6/13に東京ドームで行われた「RIZIN.28」の試合分析をします。
RIZIN.28はMMA史に残るような素晴らしい試合が続出し神興行とも言われており、その中でも気になった4試合をピックアップして、代表的なポイントを挙げて分析していきます。
バンタム級トーナメント一回戦
※バンタム級トーナメントの試合前予想の過去記事はこちら↓

朝倉海(あさくらかい) vs 渡部修斗(わたなべしゅうと)

左:朝倉海選手・右:渡部修斗選手
最も実力差があると言われていたマッチメイクですが、戦前の予想通り朝倉選手が渡部選手を一方的に攻めたてて1RKO勝ちを収めています。
僕が注目したポイントは以下の通りです。
朝倉選手はストライカーなのでスタンド勝負に持ち込みたいのです。
そのためには相手のタックルを切ったり寝技の仕掛けをディフェンスして、極力スタンド勝負をする必要がありましたが、見事にそれを遂行して勝ちました。

渡部選手のタックルを容易(たやす)く切る朝倉選手
一方、渡部選手はグラップラーなのでグラップリング勝負に持ち込みたいのです。
そのためにはいきなりタックルに行くのではなく打撃も併用して意識を散らした上でタックルに行く必要がありましたが、ほぼ打撃を出すことなくひたすらタックルに固執していました。
こうなると対戦相手の朝倉選手は打撃を気にする必要はなく、意識と身体をタックルディフェンスに費やすことができるため、渡部選手のタックルはどんどん決まらなくなります。
(※詳細は「【観戦力を養おう③】試合中のチェックポイント vol.2″打撃戦ができていない状況でのタックルはダメ!”」参照)
試合前からこの展開は予想されましたが、僕はそれを覆すべく渡部選手が打撃で奇襲をかけるかとも思っていましたが、完全に朝倉選手の試合になりました。

やはりグラップラーと言えどもオプションとして打撃を備えておくことがMMAで勝てる条件なのだと思います。
ここで少し話は逸れますが、今回の朝倉選手圧勝劇の影で、朝倉選手の不安要素も含まれていたと個人的には感じました。
それは朝倉選手が渡部選手のタックルを切ってガブった状態でもコツコツパンチを当てる程度の攻撃しかできなかったことです。
もっと膝をしっかり効かせるとかガブりを強めてバックをとって極める等、仕留めに行けたのではないかとも感じました。
あそこまで優位なポジションを取れていたのであれば、スリーパーを仕掛けたり豪快に殴りに行って勝負を決められたようにも見えました。
今回はハッキリ言って実力差があったから問題ありませんでしたが、今後さらなる強豪と鎬を削って上に上がるためには一瞬のチャンスも逃さず仕留められないと厳しいのではないか、と感じました。考えすぎかもしれませんが、それは今後トーナメントを進む上でハッキリするのかもしれません。
石渡伸太郎(いしわたりしんたろう) vs 井上直樹(いのうえなおき)

左:石渡伸太郎選手・右:井上直樹選手
優勝候補同士の注目の一戦でした。
「ストライカーの石渡選手vsグラップラーの井上選手」の構図ともとれますが、どちらも何でもできるため打撃の展開でもグラップリングの展開でも見応えある試合になるとも予想されており、今回は迫力ある打撃の展開の末、井上選手が1RKO勝ちを収めています。
僕が注目したポイントは以下の通りです。
試合はお互い手数を出し合う打撃の展開で進み、先に石渡選手が得意の右フックを炸裂させて井上選手をダウンさせます。
石渡選手がこのままKOに繋げるかと思いきや、その後、井上選手の右のショートストレートが炸裂しそこから一気に畳みかけて、井上選手が1RKO勝ちを収めています。

井上選手の右ショートストレート
ともに有効打を当て合いましたが、最後に立っていたのは井上選手でした。
この差は打撃の威力だけではなく、ダメージの蓄積があると言えます。
石渡選手は激闘派で知られており勝っても負けてもダメージを負うような戦い方を続けてきました。
一方、井上選手は比較的スマートに戦うタイプであることに加えてKO負けもしたことがありません。
井上選手より石渡選手のほうが過去の試合のダメージを蓄積しやすく、このダメージの蓄積の差がこの試合を決めた大きな原因の一つと考えます。
ダメージは試合後に100%回復するものではなく蓄積していくものであり、改めて格闘技の怖さを感じることとなりました。
スペシャルワンマッチ
※スペシャルワンマッチの試合前予想の過去記事はこちら↓

フェザー級(66.0kg以下)ワンマッチ
朝倉未来(あさくらみくる) vs クレベル・コイケ

左:朝倉未来選手・右:クレベル・コイケ選手
本大会のメインイベントでRIZINスターの朝倉選手史上最強の相手と目されるクレベル選手との一戦でした。
こちらも「ストライカーの朝倉選手vsグラップラーのクレベル選手」の構図でした。
朝倉選手がいかに打撃でダメージを与えるか、クレベル選手がどうやって朝倉選手を捕まえて寝技を極めるか、が最大の焦点でしたが、クレベル選手が2R一本勝ちを収めています。
僕が注目したポイントは以下の通りです。
組み付きたいクレベル選手は1R、2Rにそれぞれ1回ずつ組み付きに成功していますが、ともに朝倉選手をコーナーに追い詰めた状態で組み付いています。

コーナーに追い詰められてテイクダウンを取られる朝倉選手
極力組みたくない朝倉選手は絶対にコーナーに追い込まれてはいけません。
なぜならコーナーに追い込まれることで、自分の後ろの動けるスペースが制限されて、相手への対策ができにくくなるからです。
ストライカー同士、グラップラー同士であればまだ良いのですが、ストライカーvsグラップラーの場合、ただでさえ相手の攻撃に対応するのが困難ななか、コーナーやケージに追い込まれるとより追い詰めている相手の方が選べる攻撃の引き出しが増えてしまうため不利になる可能性は高いです。
朝倉選手はもっと自分の立ち位置を把握してサークリング等でコーナーを背にすることを避けるべきだったのではないかと考えます。
ただそうは言ってもクレベル選手の打撃が良かったため、うまく朝倉選手をコーナーに追い込めたのも事実です。
今回はクレベル選手が一枚上手だったと言ってよいでしょう。
73.0kg契約ワンマッチ
弥益ドミネーター聡志(やますドミネーターさとし) vs ”ブラックパンサー”ベイノア

左:弥益ドミネーター聡志選手・右:”ブラックパンサー”ベイノア選手
トップMMAファイターにキック選手が挑む構図で、MMAファイターの弥益選手は勝って当然、ベイノア選手は善戦するだけで賞賛を浴びられる試合でした。
またハンデとして体重差のある試合になっており、普段フェザー級(65.8kg以下)の弥益選手に対してライト級(71.0kg以下)のベイノア選手は体格的な優位は明確です。
試合は大苦戦の果てに弥益選手が判定勝ちを収めています。
僕が注目したポイントは以下の通りです。
試合は組みたいけどなかなか組めない弥益選手と、組ませず打撃を当てるベイノア選手という構図で進んでいきます。
そんな中、弥益選手がやっとの思いでテイクダウンを奪ってポイントをとり、一方ベイノア選手は再三ロープを掴んでテイクダウンディフェンスをしたことでレッドカードによるポイントを減点されてしまったこともあり、スプリットデシションで弥益選手の判定勝ちとなりました。

伸び伸びと戦うベイノア選手と攻めあぐねる弥益選手
試合後は、「MMAデビューなのにベイノア選手よく頑張った」「トップMMAファイターの弥益選手相手に互角だった」「レッドカードが出ていなければ勝っていた」等と敗者にも関わらず賞賛を浴びました。
確かにその通りでベイノア選手は不慣れなMMA初戦で持ち味を発揮しました。
しかし一方、MMAファイターの弥益選手からするとMMAファイターとしてのベイノア選手の情報が皆無で研究できないこと、MMAセオリー外の動きをするベイノア選手と戦うこと、体格の大きいベイノア選手と戦うこと は相当難しさを感じたことでしょう。

何が言いたいかというと、ベイノア選手が今後本格的にMMAファイターとして歩んでいく場合、今回との決定的な違いとして、相手には研究された状態での試合、同階級の選手との試合、となるため例え今回善戦したと言えども決して楽観視できないということです。
これまでもキック選手がMMAに参戦すると最初は善戦し期待されますが、その後はMMAの難しさにブチ当たり勝ち続けることができなくなっています。
以上、RIZIN.28で気になった試合の気になったポイントをまとめて分析しました。
試合の度に、過去の試合で合った展開の繰り返しがあったり、過去の試合が全く参考にならない展開がったりと、毎回発見がありいい意味でMMAの発展途上を感じます。次回はRIZIN.29の振り返り分析をしたいと考えていますのでお楽しみに!
それでは明日もロジカルに!
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