RIZIN.29を振り返ります
こんにちは、ロジカルMMAです!

特に気になった2試合をピックアップして、代表的なポイントを挙げて分析していきます。
スペシャルワンマッチ
※スペシャルワンマッチの試合前予想の過去記事はこちら↓

ライト級(71.0kg以下)ワンマッチ
矢地祐介(やちゆうすけ) vs 川名TENCHO雄生(かわなテンチョーゆうき)

左:矢地祐介選手・右:川名TENCHO雄生選手
知名度の高い矢地選手がここ6戦で1勝5敗という崖からほぼ落ちている状態からどう盛り返せるかに注目が集まった試合でした。
僕は圧倒的に川名選手有利と踏んでいましたが、矢地選手が判定勝ちを収めています。
僕が注目したポイントは以下の通りです。

まず僕が川名選手有利と考えた理由から話します。
川名選手が状況をしっかり見ながら打撃の打ち合いができるのに対して、矢地選手は打撃を見るのは苦手で振り回した一発に賭けるタイプなので、打撃戦では川名選手に分があると考えました。
またグラップリングは互角かやや川名選手が上かと見ていました。
このため全局面で川名選手がリードしていくものと考えていました。
矢地選手は試合前、練習環境や練習方法を見直し全く違う自分になった旨の発言をするようになりましたが、練習環境や練習方法を見直しただけで突然変われるほどMMAは甘くないとも思っていました。
しかし試合が始まると、そこには見事にバージョンアップを遂げた矢地選手がいました。
大振りで一発狙いの印象があった打撃もフェイントをこまめに織り交ぜたコンパクトな打撃となっており、川名選手の打撃もよく見てステップで距離をとったりもしていました。
そして2Rにはハイキックでダウンまで奪います。
さらに試合中、川名選手は積極的にタックルでテイクダウンを試みますが一度も決まらなかったのに対して、逆に矢地選手が一度テイクダウンも奪っています。
結果、圧勝とまではいきませんが明確な形で勝利を収めました。

冷静に戦う矢地選手
矢地選手は元々フィジカルには長けており強烈な一発も持ち合わせていたため、決してポテンシャルの低いファイターではありませんでした。
ただこれまではそのポテンシャルを勝ちに繋げるための道筋がなかったと言えます。
試合前に「負けないための地図が見えてきた」と話しており、また最近矢地選手のコーチを努め始めた八隅考平氏(強豪が集まるMMAジム・ロータス世田谷の代表)は「(矢地選手は元々能力はあるから)整理整頓しただけ」と話しており、元々の素材を活かして勝ち方を学んだというところでしょうか。
今回の矢地選手の例で、改めてポテンシャルを活かすということの大事さを実感しましたし、ポテンシャルを活かせるようもっていける指導者の存在は極めて大きいとも痛感しました。
MMAは個人種目でありながら個人練習がしにくくチームワークが大事なため、練習環境およびトレーナー選びはかなり肝になっているということでしょう。

子供の頃から親や先生から口酸っぱく言われてきたもはや聞き流してきた「整理整頓」ですが、この歳になってその大切さを痛感するとは思いませんでした。。。
バンタム級トーナメント一回戦
※バンタム級トーナメントの試合前予想の過去記事はこちら↓

瀧澤謙太(たきざわけんた) vs 今成正和(いまなりまさかず)

左:瀧澤謙太選手・右:今成正和選手
まるで異種格闘技のような、ストライカー(瀧澤選手)vsグラップラー(今成選手)の構図があまりにもクッキリしたマッチメイクでした。
そして試合も、互いの武器を最大限に警戒して膠着の多い展開に終始し、瀧澤選手が判定勝ちを収めています。
僕が注目したポイントは以下の通りです。
試合は、組むために近付いていく今成選手と、組みたくないからステップで距離をとる瀧澤選手という構図で展開していきました。
このため試合後は瀧澤選手は逃げ続けておりあの内容で勝ちはおかしいと批判の対象にもなっており、実際に両者のステップで見れば、追う今成選手、逃げる瀧澤選手でした。

打撃で勝負したい瀧澤選手と寝技で勝負したい今成選手
ここで判定基準を整理してみましょう。
重要なのは以下の3つの基準は優先順位で並んでいることです。
- ダメージ
- アグレッシブネス(積極性)
- ジェネラルシップ(支配度)

1. ダメージ
相手に与えたダメージですが打撃では完全に瀧澤選手でしょう。
有効打を当てただけでなく今成選手から(恐らく)ダウンまでを奪っています。
恐らくと書いたのは、今成選手は打撃を受けた後にわざとダウンしたふりをして寝技に誘いこむ策ためにしばしばダウンした振りをします。
ただ、それが作戦だとしてもジャッジから見てダウンととられても仕方ありません。
一方寝技では今成選手が足関節技を仕掛けているのでもしかしたらその攻防で瀧澤選手は足にダメージを負った可能性もありますが、その後瀧澤選手が足を引きずるような素振りがないことからダメージはないか少ないと判断できます。
よってダメージでは瀧澤選手優勢です。
2. アグレッシブネス(積極性)
積極性ですが打撃では瀧澤選手、グラップリングでは今成選手と言えます。
自分から追いに行っていることから、やや今成選手優勢でしょうか。
3. ジェネラルシップ(支配度)
かなり曖昧な概念ですが、どちらが試合を支配していたかという項目です。
これも打撃では瀧澤選手が支配していたし、グラップリングでは今成選手が支配していたと言えなくもありませんが、支配というにはほど遠いため両者同等です。
以上のことから判定基準に基づけば瀧澤選手の勝利は妥当と言えます。
しかし両者とも相手の武器を警戒していて自分のフィールドでも相手のフィールドでも戦えていません。
MMAファイターとしてはもう少し相手のフィールドに踏み込んだ上で自分のフィールドに持ち込むような引き出しがほしいと感じました。
以上、RIZIN.29で気になった試合の気になったポイントをまとめて分析しました。
今後はRIZIN.28,29のバンタム級(61.0kg以下)で勝ちあがった8人の選手が激突してさらに熾烈な戦いが待ち受けています。
また恐らく開催されるであろう大晦日のビッグイベントに向けて各階級で新たなストーリーが生まれてくるものと思います。
ますます目が離せなくなったRIZINに今後も注目していきましょう!
それでは明日もロジカルに!
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