MMAにおける二種類の刃物「日本刀」と「懐刀」
こんにちは、ロジカルMMAです!
今回は”少し上級者向けのマニアックなロジカル講義”をしていきます。上級者向けって読む側もそうなんですが、書く側も結構エネルギーが要るので

ずっと敬遠してサボっていました…
しかし上級者の方にも楽しんでいただきたいので、早速記事を書きます!
突然ですがMMAには二種類の刃物があるんです。それは「日本刀」と「懐刀」です。格闘技に刃物って何のこっちゃさっぱり分からないですよね。
まず「日本刀」ですが、一振りでスパっと相手を切り裂く強烈な攻撃力を持つ武器です。一方「懐刀」は、文字通り懐に潜ませておく武器で、よほどのことがない限り懐から出ることはありません。これをMMAにおける技術の例えとして取り上げました。
日本刀を使う代表的な選手
一つ目の「日本刀」タイプの武器は、それを振って試合を優位に進めるまたは終わらせることができるものです。代表的なものとして「ミルコ・クロコップ」選手のハイキックがあります。

ミルコ・クロコップ
ミルコ選手はK-1でキック選手としての実力を付け、MMAのPRIDEに殴り込み次々とハイキックでKOの山を築き上げてきました。PRIDE時代はその勝利のほとんどをハイキックで試合を決めてきました。それだけハイキックで勝ってきたら、次の対戦相手は当然ハイキック対策をしてきますよね。それでもミルコ選手は惜しみなくハイキックを繰り出して当たるのです。速さはもちろん、ガードの上からでも効かせるパワー、そして間の取り方のうまさ等が揃ってここまでの必殺技になっています。どんな防具を備えていても「日本刀」をフルスイングされると防御できなくなるのです。
現UFCライト級チャンピオンで29戦29勝0敗という「ハビブ・ヌルマゴメドフ」選手のテイクダウンも「日本刀」です。過去29戦全ての対戦でハビブ選手はひたすらテイクダウンを奪い続けてきました。当然、次の対戦相手は研究しなくともハビブ選手がテイクダウンが得意なことは分かっており対策はしているのですが、ハビブ選手は全試合テイクダウンを仕掛け、全試合テイクダウンを奪ってきました。
他にも、「ヴァンダレイ・シウバ」選手のパンチ、「アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ」選手のギロチン、「北岡悟」選手の足関等も「日本刀」に該当します。しかしこの「日本刀」タイプは2000年代前半までは多数いましたが、MMAレベル、特にディフェンス技術が著しく向上することにより、なかなか一つの技が成功し続けることはなくなりました。2021年現在で「日本刀」を持っているのはハビブ選手ぐらいではないでしょうか。MMAの技術が研ぎ澄まされていく中で、技術の向上自体は喜ばしいものの、ファイトスタイルや技術が画一化されて寂しい一面もあります。ただの贅沢ですかね。
懐刀を使う代表的な選手
二つ目の「懐刀」タイプの武器について説明します。MMAの技術が向上したことでナリを潜める「日本刀」に代わって「懐刀」が頭角を現します。「懐刀」は懐に忍ばせておくだけで効力を発揮するものです。代表的なものとして「ジャスティン・ゲイジー」選手のレスリングテクニックがあります。

ジャスティン・ゲイジー
ジャスティン選手はUFCトップクラスの選手で25戦22勝3敗という素晴らしい戦績の持ち主でもありますが、特筆すべきは22勝のうち実に19勝がKOであることからジャスティン選手の驚異的な打撃力が推し量れます。しかし元々ジャスティン選手はレスリングの選手で、高校時代はアリゾナ州チャンピオン、さらに大学時代にはオールアメリカン(アメリカのオールスター選出)という輝かしい成績を収めたバリバリのトップレスラーです。にも関わらずジャスティン選手はその卓越したレスリング技術を一切発揮することなく、試合では次々に打撃を放っていきます。組技の展開になっても負けない自信があるからこそジャスティン選手は思い切って打撃を振るっていけるのです。対戦相手にすれば、ジャスティン選手が打撃もレスリングも強力であることを知っているが故に、どちらに対しても最大限に警戒せざるを得なくなり、それぞれへの対応が半端になってしまいます。その結果ゲイジー選手は、卓越したレスリングテクニックという「懐刀」を忍ばせて、強烈なパンチで豪快なKOの山を築いてきました。
ゲイジー選手と同様の「懐刀」を持つ選手はレスリングが盛んであるアメリカ人選手に多く、現トップクラスの「カーティス・ブレイズ」選手やレジェンド枠では「ロビー・ローラー」選手、「山本KID徳郁」選手等がいます。

余談ですが・・・
「懐刀」は絶対に出さないというものではなく「いざというときには出す」ものですが、ゲイジー選手の場合、下手するとUFCでは一度も出していないかもしれません。ちょっと極端過ぎてもはやあるのかどうかすら怪しくなってくる「懐刀」です(笑)しかし相手のタックルを切る(捌く)という「ディフェンスとしてのレスリング」は随所に見せており、これは本当にうまいです。ですから「懐刀」はしっかり忍ばせています。
以上、今回は「日本刀」、「懐刀」の二種類の武器を極端な例として紹介しましたが、もちろんこの二種類という分類が絶対正しいわけでもないし、今後もパターンは増えていくと思いますが、「MMAの変遷の中で武器の使い方が変わっていく」ことは間違いので、今後の武器の使い方に注目していきましょう。
それでは明日もロジカルに!
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