2000年代 ストライカー全盛期を迎えるまで
こんにちは、ロジカルMMAです!
今回はMMA世界史の第三編を書きます。
前回講義ではMMAにおける柔術勢の台頭を紹介しましたが、

今回は柔術家等の所謂グラップラー対策技術の進化を説明していきます。
組技、寝技で戦うグラップラー勢が台頭した1990年代
柔術勢が台頭してきた1990年代以降、組技、寝技等の所謂グラップリング技術の重要性が高まり、特に組技、寝技の攻撃パターンが飛躍的に増えていきました。
そうなると困るのは、キックボクシングや空手をバックボーンとするストライカーです。今でこそバックボーンに関わらず「打・投・極」を使いこなせるMMA技術体系が構築されていますが、当時はそうではなかったためファイターはどうしても自らのバックボーン技術に頼って戦うのが一般的でした。
このためグラップリングに対応できないストライカーは次々に淘汰されていき、極端に言えば「グラップラー>ストライカー」の構図が出始めてきました。
こうした状況の中、ストライカー達の間で徐々に注目され始めたのが「寝技に付き合わない」スタイルです。
このスタイルは後のMMAにも極めて大きな影響を与えることになり、現代MMAでも必須中の必須項目として取り入れられています。
「寝技に付き合わない」スタイルには大きく分けて二つあります。
- 「テイクダウンディフェンス」技術
- 「立ち上がる」技術
1.「テイクダウンディフェンス」技術
まず「テイクダウンディフェンス」技術ですが、相手がテイクダウンを狙ってきた際の対処方法です。
今では当たり前の技術ですが、当時のストライカーはテイクダウンを狙われるとどうしようもなく倒されてしまう展開が多く見られました。
しかし、相手の脇をすぐに差し返したり、突き放したり、コーナーやロープに背中を預けて耐えるといったテイクダウンディフェンス技術を身に着けることで、ストライカーは簡単にはテイクダウンされなくなりました。
2.「立ち上がる」技術
もう一つの「立ち上がる」技術ですが、その名の通り寝技になった際にグラウンド状態に留まらず立ち上がってスタンド状態に戻す対処方法です。
当時のストライカーはテイクダウンされると、マットに背中をベタっと付けてしまったり、寝技が怖くて相手をただ抱っこのように抱え込むだけの展開が多く見られましたが、これではただの延命措置にしかなりません。
しかし、グラウンド状態で下にされる際にマットに背中を付けずに腰を引き、尻餅状態で耐えて立ち上がる技術が普及し始め、ストライカーは例えテイクダウンされても不利な状況から脱却しやすくなりました。
これらの技術が見られた初期のストライカーとしては、例えば「ミルコ・クロコップ」選手、「ヴァンダレイ・シウバ」選手、「高谷裕之(たかやひろゆき)」選手等が挙げられます。
彼らに共通して言えるのは、テイクダウンする能力はそこまで高くないけどテイクダウンディフェンスの能力は非常に高いこと、またテイクダウンされてもその先の展開を許さず立ち上がってスタンドの状態に戻す能力に長けていることです。

左)ミルコ・クロコップ選手、中央)ヴァンダレイ・シウバ選手、右)高谷裕之選手
寝技に付き合わないストライカーが活躍した2000年代
「寝技に付き合わない」というスタイルが確立できた2000年代、ストライカーは寝技を恐れることなく自分の得意な打撃技術を発揮できるようになりました。
さらにこの頃では「グラップラー>ストライカー」の構図は完全に忘れ去られたどころか「(寝技に付き合わない)ストライカー最強説」まで出てきたのです。
このため、それ以降のMMAでは打撃がほとんどできないあからさまなグラップラーは全く活躍できなくなりました。
逆にキックボクサーやムエタイ、空手家がMMAで活躍できるようになり、この技術は現代MMAでもかなり重要な技術に位置付けされています。
前回(第二編)は「柔術勢つまりグラップラー達の台頭」、そして今回の第三編では「ストライカー全盛期」を紹介しました。そうするとその次に見えてくるムーブメントは何でしょうか?
予想しながら次回、第四編の展開にご期待ください!
それでは明日もロジカルに!
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