MMA世界史の第四編・最終章のテーマは??
こんにちは、ロジカルMMAです!

今回はMMA世界史の第四編を書きます。
四編まで来たので前回講義までのおさらいをしておきます。
第一編:喧嘩のような競技から技術革新を繰り返しMMAが生まれた。
第二編:グラップラーの台頭
第三編:ストライカーの逆襲
大体こんな感じで2000年代までは推移してきました。
そして肝心なその後ですが、MMAはこれまでにないとんでもない大転換期を迎えます。
全くロジカルな表現ではないのですが、本当にそれしか言いようがない時代に突入するのです。
それは何か。
言います、しかも一言で。
それでは第四編のタイトルを発表します!!!第四編のタイトルはこちら!!!
第四編:UFC
「えーーーー???(@ ̄□ ̄@;)」
と思いましたか?それとも
「( ゚Д゚)!!!」
と思いましたか?
「UFCって興行名じゃん!!!」
と突っ込みましたか?
しかしこれは適切なタイトルなのです。
「UFC」は多くの革命を起こした結果、一つのMMA興行であるUFC自体が時代になっているのです。
第四編が何故訳の分からないタイトルになったのか詳しく説明していきます。
- MMA自体の地位に革命!
- MMAの技術に革命!
- MMAファイターのスキルアップ体制に革命!
これがUFC 1:MMA自体の地位に革命!
そもそも「UFC」とは何かと言うと、1993年に立ち上がったアメリカの老舗MMA興行です。(「格闘技興行の種類」参照)
2007年までは日本のMMA興行「PRIDE」が世界最高峰でしたが、「PRIDE」消滅後は代わって「UFC」が世界最高峰を独走し続け、2021年現在も一強をキープしています。
UFCの凄いところはMMA界の最高峰というだけでなく、MMAそのものを格上げしたことです。
例えば、破格のファイトマネー(上位ファイターは数千万円、上位人気ファイターは億円クラス)であったり、グローバルな放送やネットによる世間への積極的なプロモーションであったり、アンチドーピング強化等による競技としての地位向上であったり、これまでのMMAとは一線を画す取り組みにより、特にアメリカでは人気スポーツのステータスを確立しました。
このため、世界中のMMAファイターのみならずオリンピックメダリストまでもがUFCを目指すようになりました。
こうなると当然ファイターのレベルも上がり、それによりファンが拡大し、資金が潤沢になり、これらの繰り返しによって巨大MMA興行であり続けています。
これがUFC 2:MMAの技術に革命!
MMA興行であるからには最も重要なのは試合のレベルです。
PRIDE消滅後(2007年以降)のUFCでは、MMAの概念が変わるぐらいの技術革新がいくつも起こったのです。
代表的なものとして以下の技術が挙げられます。
①「際の攻防」の高度化

際の攻防
「打・投・極」をそれぞれ繋ぐ「際の攻防」の高度化があります。
パンチからタックルへの移行がに高速かつ円滑になりました。
これまでもパンチのフェイントからタックルに入る技術はありましたが、その速度が飛躍的に向上しています。
またパンチのフェイントからタックルと見せかけてパンチを打つ等、揺さぶりの高度化もあります。
またタックル等で組み付いてからの選択肢が多様化しました。
これまで組んでからのパターンというと、倒して極めるというのが王道でした。
そこから技術が進化し、組んだ状態で膝蹴りして意識を散らしてから倒したり、組んでから倒さずに背後に回ってチョークを極めたり、組みながら超至近距離でのパンチ、肘打ち等でダメージを与えたり、さらにこれらを組み合わせたりすることで、組んでからの選択肢が大幅に増えています。
②スクランブル状態の誕生

スクランブル状態
「スクランブル状態」は、広義的には①の「際の攻防」に含まれるかもしれませんが、重要な技術革新の一つとして個別に挙げました。
これまでの主なグラップリングの状態というと、「両者立って組み合った状態」か、「片方の選手が上に乗って他方の選手が下になっている状態か」の二つでした。
しかしグラップリングの攻防の高度化によって、前述の二つの状態のどちらでもない状態が生まれたのです。
例えば、最初は寝技で片方の選手(A)が上をとって他方の選手(B)が下になって、AがBを支配している状態なのですが、そこからBが下からAに絡みくことでAが支配できていない状況となり、両者がもつれ合っている状態が発生します。
他にもAとBが組み合った状態でAがBを倒しかけますが、Bが中腰で堪え続け倒されているわけではない中途半端な状態が発生します。
これらの状態をスクランブル状態と呼びます。
これまでのグラップリングの展開の主であった、「投」「極」のどちらでもないような展開が誕生したのです。
これによりグラップリングでの選択肢が多様化し、攻撃のバリエーションが増えるのはもちろんのこと、劣勢になった場合にスクランブル状態に持ち込み時間稼ぎやダメージ回復といった防御のバリエーションが増えました。
③ケージレスリング

ケージレスリング
通常のレスリングの攻防はマットの上で組み合って倒し合うことですが、ケージ際でのレスリング攻防技術が向上しました。
※MMA用語集「ケージレスリング」参照
ケージレスリングは攻撃する側としても防御する側としても有効な技術です。
攻撃する側は相手をケージに押し付けることで、相手の稼働範囲を制限して次の展開に繋げられます。
それはテイクダウンであったり至近距離での打撃等です。
防御する側はテイクダウンされそうになっても自分の背中をケージに押し当てることでケージを支えにして立ち上がることができます。
これらは硬いケージならではの攻防で、PRIDEやRIZINのようなリングではロープが柔らかいためこの攻防は生まれません。
上記3つ以外にも、ステップワークの高度化やオーソドックス/サウスポーのチェンジの高度化等、細かいことを言えばキリがありません。
ここで挙げたMMAの完成度の高さはただ単に技術の研究で生まれたものではなく、ポテンシャルの高いファイター達が集まって鎬を削り試行錯誤した結晶として生まれたものです。

優秀なファイターなしに技術革新は起こり得ません。。
これがUFC 3:MMAファイターのスキルアップ体制に革命!
UFCがMMA自体の地位を向上させたことで、世界中のアスリートが目指す存在となったことは前述の通りですが、ただでさえ優秀なアスリートが集まる上にそこからさらに育てる環境も異次元なものに変わっています。
①メガジムの存在

メガジム
MMAはボクシング、レスリング、柔術等、あらゆる格闘技の技術体系を組み入れたものでありますが、それらの専門コーチが一つのジムに集結しているのがこのメガジムです。
これまでMMAのジムでMMAを習得するのでは足りず特定の技術を深く学びたい場合、別途ボクシングジムや柔術道場に通わざるを得なかったのですが、メガジムであればボクシングコーチ、レスリングコーチ、柔術コーチといったそれぞれの専門コーチが在籍しているため、そこだけで専門技術を習得することができます。
またフィジカルコーチが在籍している場合も多く、食事、トレーニング、コンディショニング等の最先端の指導を受けることもでき、MMAファイターのフィジカル強化に大きく寄与しています。
②最新科学技術の導入
スポーツ全般に言えることですが、これまで技の研究は実体験に基づいたものであったり、見よう見まねでの練習であったり、特に日本だと近年批判的な扱いを受けている根性論であったりと、決して「科学」に基づくものではありませんでした。
フィジカルの要素が極めて高い陸上競技等では科学の導入が進んできましたが、歴史の浅いMMAに科学が導入されることは黎明期ではなかなかありませんでした。
ところがUFCのレベル向上によって、UFCファイターを支えるジム、コーチ陣は科学を積極的に導入して技術云々ではなく選手の身体能力を飛躍的に向上させています。
最先端のトレーニングによる筋肉量、質の向上、心肺機能(スタミナ)の向上等に加えて、試合時にいかに体格的優位に立てるかに大きく影響するリカバリーの方法等も科学に基づき進化しています。
例えばUFCのフェザー級(65.8kg以下)選手と日本のMMA興行のフェザー級選手の試合時の体格を見比べると、大きさが全然違うことが分かります。

実際見ていれば「この選手が同じ階級で戦うの?」と驚くはずです。
それはUFC選手が、リカバリーにより体重を戻す技術が高いからです。
今回の第四編「UFC」が最終章となります。
2010年頃から始まり2021年現在も続く「UFC」一強時代ですが、これまでの歴史を見ていても様々なムーブメントがあり必ず変化点がくるものだということは分かります。
この先、「UFC」に代わるMMA興行が出てくるのか、また、ファイターの特徴に変化が出てくるのか、MMAのルールが根底から変わったりするのか、等、可能性はいくらでもあるかと思います。
これからも最先端のMMAをチェックしていきたいと思います!
それでは明日もロジカルに!
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